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会社案内 作成、その対策

経営陣はビジネス・スクールを出たエリートからなり、巨額の報酬を目指して企業を次々と渡り歩く。
一般社員はエリートとは関係なく転職し、自社が買収されても仕事場に居続けることも多く、経営陣とは切り離された存在である。 一方、日本の企業はどうだろうか。
もちろん、日本の企業の多くが「所有」と「経営」は分離している。 とくに大企業においてこの傾向は顕著だろう。
しかし、「経営」と「社員」がアメリカの企業のように分離してしまったのかといえば、決してそうではない。 エリートとそうでない社員との懸隔は、以前より大きくなっているとはいえ、まだまだ現場から仕事を学んで出世して経営陣となるというイメージは残っている。
M&Aは、こうした日本人の企業イメージおよび組織イメージを破砕していく。 M&Aの隆盛は日本企業のマネジメントに対する挑戦であるだけでなく、文化的および組織的なレベルでの挑戦にもなることに、経営者は本当にどこまで気がついているのだろうか。
現在のような、投資銀行や投資ファンドがM&Aを繰り返す世界経済の仕組みが変わることは、当面、期待できない。 資本市場を開放して金融資本を活性化させるのは、IT産業を後押しすることと並んで、いまやアメリカの「国策」ともいうべきものだからだ。
各種のファンドはその意味で、アメリカの国策産業といえる。 もしこの国策に語りが見えるとすれば、それはアメリカが資本市場の自由化を考え直すときであり、切っ掛けはドルの暴落以外に考えられないだろう。

すでに、二十数年にわたってドル暴落の予測は繰り返し登場してきたが、なかなか現実とならない。 しかし、だからといって、日本がそのまま丸ごとアメリカの「ファンド資本主義」を受け入れるべきだということにはならない。
それは単に、日本企業がアメリカ企業に買収されるのが悔しいからではない。 すでに述べてきたように、アメリカ経済と日本経済は、その構造においてあまりにも異なっているからだ。
まず、アメリカ経済の牽引車となっているのは、金融産業と情報技術産業であり、いずれも強力な政治力によって、世界に対し支配的な影響力を維持している。 いっぽう、日本経済の牽引車となっているのは、いまも液晶テレビや自動車などの製造業である。
製造業というのは性格上、あまり激しい金融上の変動があるのは好ましくない。 激しい金融化に適応しようとすれば、WのGEのようにノンバンク化するしかないだろう。
また、アメリカ経済の場合、技術革新が生まれるのはベンチャー企業と軍需産業が中心だが、日本経済の技術革新はいまも大企業が担っている部分が多い。 激しいM&Aが横行すれば、R&D(研究開発)費が低下し、技術革新のコア・コンピタンスが買収された企業の組織解体のために失われる危険が高い。
しかも、激しいM&A時代を経ていない日本には、株式時価総額より清算価値のほうが高い企業も多く残っている。 つまり、株式をすべて買い付けても、買収後に部門や施設をバラ売りすれば儲かるほど多くの資産をもつ企業が、まだたくさんあるということだ。
したがって、これから日本で始まるのが、アメリカの八○年代型買収であるLBO(レバレッジド・バイアウト)である可能性はきわめて高い。 LBOは、すでに述べたように、買収対象としている企業のキャッシュフローと資産を担保にして買収資金を調達するというあざとい手法だが、含み資産が多い企業を対象にした場合に効果を発揮する。
この手法が横行した時代のアメリカ産業はひどく疲弊した。 それでも企業は生残りをかけて株高経営にしがみついたので、株価だけは上昇したのである。

これから日本では、ますます世界中の投資銀行や投資ファンドが暗躍し、LBOが盛んになり、産業全体の技術開発力と労働生産性は下落するにもかかわらず、株式市場だけはバブル化していくのかもしれない。 こうした馬鹿ばかしい事態を避けるため、日本企業および日本政府は真剣に対応策を練る必要がある。
まず、三角合併解禁に対して、緊急に行われるべきは安定株主の再評価だろう。 安定株主工作はこれからも防衛策として重要であり、安定株主が非上場企業であれば本来の意味での「もの言う株主」でもあり得、効果も高いと述べる専門家もいる。
相互持株ですら議決権の四分の一までなら会社法でも問題にしないから、当面の防衛策としては有効だといえよう。 また、「初めにアメリカ方式ありき」で提示された敵対的買収の「買収防衛策に関する指針(ガイドライン)」を、早急に改めるのは言うまでもない。
アメリカはこの二十数年、「株主資本主義」を徹底することで、敵対的買収を原則として認め、そのかわり防衛策も認める方針でやってきた。 しかし、先進諸国のすべてが、アメリカと同じ考え方だと思うのは間違っている。
ヨーロッパ諸国は、敵対的買収に対して、原則として制限する方針をつらぬいてきた。 たとえばドイツは、敵対的買収については原則的に制限を加え、敵対的買収が始まる以前に防衛策を決めておく場合と、敵対的買収が始まってからの防衛策には異なる条件を課するというやり方でM&A時代に対応しようとしている。
イギリスの場合は、防衛策を認めない代わりに、もし敵対的買収を始めたら、全部の株式を購入しなくてはならない。 また、そのための資金はすべて現金という「シティ・コード」がある。
この方式であれば、Mファンドのような利鞘稼ぎはできなくなり、アメリカのような株式交換による買収は不可能になる。 経済産業研究所のT上席研究員は、シティ・コードの導入を主張して「マレーシア、シンガポールといったアジア諸国でもこうした制度が採用されており、米国のポイズンピル以上に「グローバル・スタンダード」といえる仕組みである」(Fビジネスアイニ○○五年九月十二日付)と指摘している。

さらに、ドイツのようにステークホルダー(企業の利害関係者)の範囲を、株主だけでなく社員や経営陣をも含めたものとして捉え直すことも必要だ。 そもそも日本はこの考え方で長い間企業を運営してきた。
すべてを株価だけで評価するようになったアメリカ金融資本主義の「病理」を、いまさら真似る必要は少しもないのである。 金融モラルの崩壊を語るとき、いつも取り上げられるのはHやMのような人物だ。
しかし、その裏には投資銀行や会計監査法人などが控えており、手数料稼ぎに余念がないことはすでに述べた。 そして、日本の場合にはもうひとつ、金融のモラル崩壊を加速する不思議な雰囲気が存在していた。
この十数年を振り返れば、八○年代のバブルを引き起こした腐敗に激しい批判が行なわれる一方で、バブル後の不況を克服すると称されたものに対しては驚くべき利益供与と特権が許されてきたのである。 まず、分かりやすい例をあげておくが、私はかつて現役のS会長だったIが、IT戦略会議議長に就任したとの報道に接したとき、わが耳と目を疑った。
「これは、あまりに非常識でデタラメなことだよね」と、ある若い新聞記者にいうと、その記者は怪訝な顔をしていったものだ。 「どうしてですか。
Sニーはいま最先端をいくIT企業なんですよ」まさに、「最先端をいくIT企業」の現役会長だから、「非常識でデタラメ」なことだったのではないか。

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